予防薬と治療薬の違いを知っておく

病気にかからないようにする薬

薬には病気を予防する役割のあるものと、病気を治療するためのものがあります。
2種類のタイプの薬の違いは多岐にわたります。

病気を予防する薬は、まだ病気にかかっていない人が罹患しないようにするため、あるいは罹患しても症状が軽くてすむために事前に摂取する薬です。
例えばインフルエンザ予防ワクチンは、まだインフルエンザにかかっていない人に接種します。
インフルエンザワクチンは、体内に入ると免疫反応を起こし、ウイルスに対する抗体を作ります。
次にインフルエンザウイルスが体内に入った時にウイルスを攻撃して増殖するのを抑制します。

別の例として、片頭痛を抑制するためにデパケン(一般薬名はパルプロ酸ナトリウム)や、プロプラノール塩酸塩(一般薬名はインデラル)、トリプタノール(一般薬名はアミトリプチリン)などを使いますが、これらの薬は片頭痛が起きてから飲むものではなく、片頭痛の辛い発作を予防するための薬です。
インフルエンザワクチンとの違いは、片頭痛に罹患していない人に使う薬ではないということです。

片頭痛を予防するものではなく、片頭痛を持っている人が頭痛発作を起こすのを防ぐための薬です。
このように、予防薬にもさまざまな意味があります。

ただし、どんな薬にも言えることですが、予防薬に100%の予防効果はありません。
先ほどのインフルエンザワクチンを例にすると、ワクチンを接種してもインフルエンザに罹る人はいますし、ワクチンを接種していなくても罹らない人もいます。
抗体ができにくい体質の人は効果が出にくいです。
また、ワクチンに含まれるウイルス株とは別のウイルス株に感染すると、いくらワクチンを接種してもインフルエンザに罹ります。

病気を治す薬

治療薬とは、病気を治療するための、あるいは症状を緩和したり、病状が進行するのを抑えるための薬です。
治療薬にもさまざまなタイプがあります。たとえば「原因療法」と呼ばれるタイプの薬は、病気や症状の原因にアプローチする薬です。
膀胱炎や急性咽頭炎など、細菌による感染症の治療に使われる抗生物質などは原因療法タイプの薬です。

「対症療法」とは、原因にアプローチするのではなく、病気によって引き起こされる特定の症状を抑えたり、緩和する薬です。
熱を下げる解熱剤、痛みを和らげる鎮痛剤、下痢を止める止瀉薬などが代表的です。

予防にも治療にも使う薬もあります。抗ウイルス薬のタミフルはインフルエンザの予防に使うワクチンとは違い、ウイルスの増殖を抑えるためのものなので、回復までの期間を短くします。
ワクチンとは違い、ウイルスに感染した後で服用します。
そのため治療薬でもあり予防薬でもあるのです。